ENWAコレクション
ジャーナル

ENWAと暮らす

ものづくりの舞台裏。ひとつひとつの曲線を形づくる、決断の物語。

01

部屋が呼吸する

なぜ私たちは、鋭いエッジのない家具をつくるのか。

02

曲線

手がエッジを見つける。そして、離れたくなくなる。

03

建築から、オブジェへ

建築のスタジオが、どうして家具をつくり始めたのか。

04

眺め

風景のために設計する。ニュージーランド南島の、ある私邸。

2020年11月

部屋が呼吸する

いつの頃からか、モダンデザインは「鋭さ=洗練」と決めてしまった。私たちは、そうは思いません。

そうなった経緯は、よくわかります。建築でも家具でも、すべてがナイフのようなエッジへと薄くそぎ落とされていく。プロフィールが薄いほど、デザインは洗練されているとされる。角を丸めるのは弱さへの妥協 — 形の純粋さを裏切る、実用への譲歩のように感じられるからこそ、角はそのまま立てておかれるのです。

突き板の家具が、それをいっそう悪くしました。表面がMDFに貼られた0.6mmの薄皮であれば、意味のある曲線を彫り出すことはできません。突き板は割れ、浮き、剥がれる。だから業界は、それが優れていたからではなく、素材がそう求めたからこそ、鋭い造形を受け入れていったのです。鋭さが、初期設定になりました。

ENWAの曲線を描く脚のディテール チャコールオークの木目のマクロ

ENWAのエッジプロフィールと、チャコールオークの木目 — 目には薄く、手にはやわらかく。

けれども、無垢材と向き合うなかで私たちが学んだのは、こういうことです。鋭さは、ひとつの選択にすぎない。ミニマリズムに本来そなわっているものでもなければ、エレガンスに不可欠なものでもない。それは、ただの慣習なのです。

無垢のオークは、突き板が夢見ることすらできない曲線を保つことができます。エッジは、あなたの目がカミソリのように薄いと読み取るところまでそぎ落とされ、それでいて手は、途切れることのないやわらかさを見つける。その造形は、精密で、意図的で、計算され尽くしながら、脅かすのではなく、守ることができるのです。

「エッジが、薄く見え — ミニマルに感じられ — それでいて、実はやわらかいとしたら?」

これは妥協ではありません。妥協とは、鋭いテーブルにゴムのバンパーを貼りつけることです。私たちがするのは、曲線そのものを設計すること — 建築に使うのと同じデジタルツールを用いて — 安全と美が、せめぎ合う力ではなく、ひとつの線になるように。

家具業界はこれからも鋭いエッジをつくり続けるでしょう。製造が安く、仕上げが容易で、写真映りもいい。けれど次にテーブルに手を滑らせ、あの唐突で硬い角を感じたとき、思い出してください — それは、誰かが選んだものなのだ、と。

私たちは、別の選択をしました。

ENWAの哲学

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2021年8月

曲線

手がエッジを見つける。そして、離れたくなくなる。その瞬間のために、私たちは設計しました。

私たちは、意外な場所から着想を得ました — Appleです。iPhoneの角を見てください。あれは単純な円弧ではありません。スクワークル — 予想よりずっと手前から向きを変えはじめる、連続した曲率です。なぜそう感じるのか分からないまま、あなたの目はそれを「完璧」と読み取る。

私たちは家具にも同じ原理を、ただし三次元で応用します。ENWAのテーブルのエッジは、あなたが思うよりずっと手前から、ゆるやかに、少しずつ曲がりはじめる。だから角になるはずの場所に手が届くころには、そこにはやわらかさしかありません。目はなお、すっきりとした薄いエッジを読み取る。けれど手は、まったく別のものを見つけるのです。

テーブルの角の形状 テーブルの脚先の形状

開発図面:テーブルの角のディテール(1:2)と、脚先の形状(1:5)

およそ二百のバリエーションを試しました。難しかったのは、異なるスケールの曲線どうしの関係です。天板のエッジのうねり。脚のテーパー。それらが出会う場所。そのすべてが、別々の判断を縫い合わせたものではなく、ひと続きのひとつの所作のように感じられなければなりませんでした。

始まりは、いつも紙の上です。デジタルモデルの前に、プロトタイプの前に — ただ一本のペンと、ひとつの問い。これは、どう感じられるべきか。最初のスケッチは、CADには決して捉えられないものを掴んでいます — 曲線の背後にある意図です。ここに10度の傾斜。そこに450mmの座面高。「curve(曲線)」という言葉と、幾何学が心地よさへと変わるまさにその瞬間を指す矢印。

ENWAチェアの初期デザインスケッチ

最初のスケッチ — ENWAチェアが、ひとつの曲線ごとに形をなしていく。

紙から、ピクセルへ。すべてのスケッチは3Dで検証されます — 回し、拡大し、問い直す。曲線は、どの角度から見ても成立しているか。プロポーションは、1300mmでも3200mmでも保たれるか。下に並べた画面のキャプチャは、生のまま、磨かれていません。それが肝心なのです。撮影の前の、デザインの本当の姿がここにあります。

生の3D開発 — セン ダイニングテーブルを実寸スケールで検証する。

「正しい曲線とは、画面でいちばん美しく見えるものではない — あなたの手が、離れたくなくなるものだ。」
家具は、あなたの暮らしの質のなかへ消えていくべきです。その逆ではなく。

私たちは、無垢材を三十年以上扱ってきた職人の親方が率いるチームと出会いました。これは売り込みの場ではなく、木目の方向や含水率について、そして季節が移ろうときオークに何が起きるのかについての、ひとつの対話でした。

バンドソーで北米産ホワイトオークの原木を挽く オークを手作業でサンディングする職人

原木から、磨き上げられた表面へ — 北米産ホワイトオークを挽き、手でサンディングする。

どのピースも、北米産ホワイトオークから始まります — その木目ゆえに選んだ材です。私たちは、表面に物語を語る木がほしい。一枚一枚の板はすべて違っていて、それこそが肝心なのです。

オークと張地の素材サンプル 張地の質感のクローズアップ

ナチュラルとチャコール仕上げのオークのサンプルと、織りの張地 — 耐久性と温かみで選びました。

木材は切り出され、接ぎ合わされ、それから落ち着くまで寝かされます。無垢材は動く — 膨らみ、縮み、湿度について意見を持っています。この工程を急げば、後から割れが出る。だから、私たちは急ぎません。

デジタルで設計された形状が、無垢の板から削り出されます — はじめは荒削りです。何か月もかけて磨き上げた曲線が、いま物理的なかたちとして存在する。ここが、機械が止まり、手が始まる場所です。

そこから三日、四日かけて、チームはすべての曲線を手で仕上げていきます。デジタルで定めた形状をなぞりながら、機械にはできない微調整を施す — 木目が向きを変える場所、ふたつの面が出会う場所、数学に人の手が必要になる場所で。

どのピースにも、極薄マットウレタン塗装が施されます — 三度塗りで、各層のあいだに安定させる時間をおきます。あえて極薄に:塗膜が木の上に積み上がるのではなく、木の中に低く沈むので、日々の摩耗や、こぼれ、湿気から守りながら、木目は見え続け、触れれば温かいまま。暮らしのなかで使い込むための仕上げです。つやつやしたものは何もなく、木を隠すものも何もありません。

最後のテストは、視覚ではありません。触覚です。私たちは、すべての表面に手を滑らせます。正しいENWAのピースは、あなたに触れ続けたいと思わせる — 手は曲線に沿って行ったり来たりし、そのやわらかさを、何度でも見つけ直すのです。

ENWAテーブルの脚のディテール チェアを添えたセン ダイニングテーブル

完成したセン ダイニングテーブル — 数学が、感情になる場所。

セン ダイニングテーブル

北米産ホワイトオーク · チャコール塗装 · 2200mm / 3200mm

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2021年3月

建築から、オブジェへ

家具をつくろうと思っていたわけではありません。私たちは、建築家でした。

長年、私たちは建築を設計してきました — 住宅、リゾート、書店 — 五つの大陸にまたがって。空間が人の感じ方をどう形づくるかを、私たちは理解していました。光がどう部屋に入ってくるか。動線がどう流れるか。素材がどう年を重ねるか。

けれど、いつも同じ問題に突き当たりました。建築のまわりに注いだのと同じ心配りに、その内側に置かれる家具が、決して見合わなかったのです。

ハイエンドのヨーロッパのブランドは惜しいところまで来ていましたが、その価格は、もたらされる価値とかけ離れていました。量産品は写真では正しく見えても、現実では崩れていく — 突き板は剥がれ、接合部は緩み、表面は触れると冷たく、人工的でした。

その中間 — 優れたデザインと、確かな手仕事と、本物の暮らしが出会う場所 — には、ほとんど何もありませんでした。

「私たちはいつも、あらゆるディテールに心を配った空間を設計していた — 人が実際に触れるオブジェだけを、のぞいて。」

建築家として、私たちは十年をかけて、デジタル設計、材料科学、構造工学を学んできました。力がどう形のなかを流れるかを理解していた。幾何学が、精密でありながら有機的でもありうることを。無垢材が、季節をまたぎ、何十年をまたいでどう振る舞うかを。

私たちは気づきました。建築的な思考を、家具に持ち込めるのだ、と — マーケティングの切り口としてではなく、本物の設計手法として。建物を形づくるのと同じツールが、テーブルの脚を形づくれる。ファサードに光がどう当たるかへの同じ注意が、仕上げが木目をどう見せるかを導けるのです。

そこで私たちは、別の問いを立てました。もし家具が、建物と同じように設計されたら? 同じ厳しさで。人が実際にどう暮らすかへの、同じ配慮で。面が面と出会う様への、同じこだわりで。

その問いが、ENWAになりました。

円和 — 円(えん):円、調和、満ちていること。そして和():やすらぎ、やわらかさ、日本。どのピースも、途切れることなく流れる。どのエッジも、触れたくなる。

私たちは、いまも建築家です。いまも建物を設計しています。けれどENWAは、私たちの哲学が、手にとれる何かになる場所なのです。

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